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「無収入の人間にも貸すべき」という論理のおかしさ

低利子の貸付はいくつかある。たとえば、労働金庫(ろうきん)が行っている「生活資金融資」がある。これは、年率三~五パーセントの低利で、使途は原則として自由。限度額は各地の労金によって異なるが、消費者金融とほぼ同程度の金額が借りられる。対象は、企業などに勤める給与所得者のほか、ろうきんが指定する生活協同組合の組合員なども利用対象となる。難点としては、収入を証明する書類のほか、住民票等の書類を用意する必要があることと、審査にやや日数がかかることなどが挙げられる。それらは、消費者金融の契約のスピードには比ぶべくもないが、消費者金融やカード会社のカードローンなどに比べると、はるかに金利が安い。そのほかにも、貯蓄型の生命保険に加入している人であれば、契約者貸付が利用できる。これは、解約返戻金の範囲内で現金を借りる事のできる制度で、やはり年率五パーセント程度だ。

そもそも、借金をするというのは、それなりにリスクを伴うことのはずである。それが、消費者金融やローン会社の戦略によって、キャッシングという表現に変えられ、「ご利用は計画的に」などと言いながら、実際には無計画もはなはだしい貸付によって、多くの金融被害者を生み出してしまった。関連の法整備によって、少しずつではあるが多重債務の問題は健全化の方向へと動いているようである。しかし、その一方で貧困、格差の問題は非常に深刻だ。今後、庶民の生活と借金の問題が、どのように動いていくのか。大マスコミが言ったことが、本当に実現するのか、それともやはりとんだピント外れだったのか、それは、これから現実のものとなって現れてくることであろろう。

もし、多くのメディアが報じたように、「総量規制でヤミ金が増えた」などということになったら、それは総量規制のせいではなく、別の社会的要素、社会問題によるものと考えたほうがよいのではなかろうか。つまり、貧困の問題としてである。もうひとつ、法規制に反対する人々の主張としては、「無収入だからといって、専業主婦に貸さないのはおかしい」という意見である。たしかに、主婦といえども突発的な事情によるイレギュラーな出費は少なくない。そうした場合、カードローンやキャッシングは便利ではある。しかし、借金というものの基本は、あくまで返済と表裏一体である。返済能力を無視した借入がいかに危険なものであるかは、理屈として単純明快に理解できるものであるし、自身も悲惨な実例をいやというほど見聞している。

にもかかわらず、「主婦にも貸してやれ」と主張する人々は、その根拠をろくに説明していない。「専業主婦も、医療費などをキャッシングでうまく回している人が少なくない」などと、あいまいな言い方をしているだけで、ではどのように「うまく回して」いるのかが、まったく説明されていない。そもそも、返済能力がない人に貸すことは、それが個人であれ組織であれ、悲劇の火種となることは債務問題について知識と経験がある者であれば瞬時にして理解できるはずである。そして、専業主婦が当てもないのに借金をして、それが多重債務の発端になってしまう事例というのも、非常に多い。現在の法規制であっても、収入のある配偶者の同意さえあれば借入はできるのだから、その方向で安全領域内での借入に止めるべきであろう。

また、「夫には内緒で借りたい」「夫に負担をかけたくない」という主婦も多いことは理解できる。そうした心情は、ごく自然で普通のことだ。しかし、「夫に内緒での借金」というものが、トラブルの原因となりやすいことも多くの実例から明らかとなっている。こうした意味からも、収入がない専業主婦などへの貸付は制限されるべきではなかろうか。もし現金が必要なのであれば、生命保険の契約者貸付のような、低利で返済にも便宜が図られるようなものをまず活用すべきであろう。生きていく上で、何もしなくとも現金が必要なことからはのがれられない。だからといって、借金に頼ることについては、よく考えなくてはならないというのは、これまでの数々の多重債務の事例が示している。