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債務整理二次被害に関する問題

二〇〇九年十一月に全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会が実施した、弁護士や司法書士による債務整理二次被害に関する電話相談では、全国から二一四件の相談が寄せられた。その内容は、「電話や事務スタッフとの対応だけで、弁護士や司法書士が直接の面接をしない」といったものから、「報酬が高いと感じる」「こちらの事情を考慮してくれず、一方的に支払いを請求される」といったギャランティの問題、果ては「弁護士に言われるままに決められた金額を毎月キチンと支払っているが、整理がついたのかどうか何の連絡もない」「整理に着手したと明言したのに、いまだに貸金業者から支払請求の連絡が来る」などといった、債務整理そのもののズサンさが現れるケースも珍しくない。

だが、そうした二次被害にあった人々の多くは、泣き寝入りしてしまったり、あるいは被害そのものに気づかなかったりするケースも少なくない。たとえば、わたしがたまたま取材できた次のケースも、そのひとつである。神奈川県に住むある主婦(四五)は、生活費の補填のためクレジットカード会社などからの借入が三〇〇万円ほどにまで膨れ上がり、夫との相談の上、債務整理を決意した。そして、やはりTVCMとフリーペーパー掲載の広告で見かけた、八王子市にある某法律事務所を訪れた。事務所では、まずスタッフに名前などを聞かれた後、相談内容その他をカードに記入させられた。その後、弁護士によって面接が行われた際に自己破産を勧められたという。

事前に夫とよく話し合って破産も仕方がないと考えていた主婦は、弁護士のその提案に従うことにした。すると弁護士は、「弁護士費用として二〇万円かかります。あなたは現在、収入はありますか」と聞いてきた。そこで主婦は、数ヶ月前からパートの仕事をしており、月収で四万円もらっていることを弁護士に言った。すると、弁護士は間髪入れず次のように言ったという。「では、その四万円を今月からこちらに払ってください。破産の(弁護士)費用が二〇万円ですから、五回払いです」口調はていねいだが、その態度は高圧的で一方的だった。しかも、その弁護士はこうも付け加えた。「たった五ヶ月で、借金を返さなくて済むようになるんですよ」これに対して、主婦は次のように憤る。

「こちらの家計の事情なんて、ひと言も聞いてくれないんです。パートの給料だって、遊ぶためとか、ヒマだから勤めに出ているというわけじゃないんですよ。日頃の生活のために、どうしても必要な金額だってあるんです。パートの仕事だって、子供が成長してきたのでようやく始めることができたんです。それを、まるで余分なお金か何かのように『給料を全額払いなさい』なんて、こちらの生活も人間性も、この弁護士はまったく無視しているとしか思えません」弁護士の「借金をチャラにしてやるからパートの収入全額を費用に回せ」という高圧的な態度に憤慨した主婦は、「一応、主人と相談してからにします」と理由をつけて、弁護士事務所を後にした。

「帰り際に弁護士は、『決心したら、いつでも連絡ください』なんて言っていましたが、もう絶対にあの弁護士には会うつもりはありません」結局、この主婦は行政の無料相談などを経て、法テラスを利用して債務整理を行ったという。本当に、この弁護士は主婦のパートタイム労働をいったいどのように考えているのであろうか。「夫に決まった収入があるのだから、パートの給料は余剰所得」と考えているとしたら、この弁護士の生活感覚はとても現実的とは思えない。また、もし現実的な感覚が失われていないにもかかわらず、「給与四万円を全て払え」と放言したならば、まさにカネのことしか考えていない、相談者の生活などまったく無視という考えだと言うほかはない。

繰り返すが、主婦は「パートの給料が月に四万円」としか答えていない。四万円のうち、およそいくらを債務整理に使うことができるかなどとは、ひと言も話していない。また、弁護士からそうした質問など一切受けていないのである。このように、面接してもいい加減な対応しかしない弁護士がいるくらいなのだから、まして面接をしないとなれば、そのズサンさは言うまでもない。本来なら、相談者の収入を確認したうえで、生活に支障が生じない、無理なく支払える金額について相談するのが普通であり、そうでなければならない。にもかかわらず、収入の確認が「弁護士費用として取れる金額」の確認でしかないのであれば、依頼者の生活再建などカケラも考えていないことになるのは明らかだ。